ファン・ゴッホの寝室
The Bedroom / ファン・ゴッホ美術館
木のベッドがひとつ、椅子が2脚。狙いは「休息」を色そのもので表すことだった。ところが、いま目に入る強い対比は当時の色ではない。館の調査によれば、壁と扉はもともと青ではなく紫である。落ち着いた紫の部屋を思い浮かべると、印象はかなり変わる。奥の壁が傾いて見えるのも失敗ではなく、部屋の角が本当に歪んでいた。
何が描かれているか
木のベッドがひとつ、椅子が2脚、水差しと洗面器の載った机。壁には自分で描いた絵が掛かっている。アルルの「黄色い家」にあった、ゴッホ自身の寝室である。
明るい色は、意図して選ばれている。狙いは「休息」あるいは「眠り」を、色そのもので表すことだった。
奥の壁の角度が妙に見えるが、これは描き損じではない。部屋の角が実際に歪んでいた。遠近法(近くを大きく、遠くを小さく描いて奥行きを出すやり方)が画面全体では正確に守られていないのも、わざとである。ゴッホは弟テオへの手紙で、室内をあえて「平らにし」、影を省いたと書いている。日本の版画のように見せたかったからだ。
なぜ重要か
いま見える強い色の対比は、描かれた当時のものではない。長い年月のあいだに色が変わってしまった結果である。ファン・ゴッホ美術館の調査によれば、たとえば壁と扉は、もともと青ではなく紫だった。落ち着いた紫の部屋を想像すると、この絵の印象はかなり変わる。
ゴッホ自身はこの絵をよほど気に入っていた。病から回復したあとの言葉が残っている。「病気のあとで自分の絵をまた見たとき、いちばんよく思えたのは寝室だった」。飾りのない小さな部屋が、彼にとっては一番の絵だった。
制作背景
1888年10月、35歳。アルルの「黄色い家」で描かれた。
部屋はゴッホが自分で整えたものである。簡素な家具を揃え、壁には自分の作品を掛けた。ここに友人の画家を迎えるつもりでいた。
日本の版画への傾倒が、この絵ではっきり形になっている。影を落とさず、色の面を平らに置く。西洋の絵が長く積み上げてきた奥行きの作り方を、彼はここで意識して外している。休息を色で表すという狙いも、この平らな画面と結びついている。
目録
s0047V1962(F0482・JH1608)
出典:ファン・ゴッホ美術館 作品ページ(2026-08-29 確認)