1470–1475年頃
キリストの洗礼。ヨルダン川でヨハネがイエスに洗礼を授け、左に2人の天使がひざまずく。
キリストの洗礼
Battesimo di Cristo / ウフィツィ美術館
何が描かれているか
ヨルダン川の岸辺で、イエスが洗礼者せんれいしゃヨハネから水を注がれている。ヨハネは細い十字架と巻物を持ち、巻物には「ECCE AGNUS DEI」——見よ、神の小羊——と記されている。これから来る救い主を人々に告げる言葉だ。
左手前に2人の天使がひざまずき、そのうち1人がイエスの脱いだ衣を抱えている。
その天使の姿勢が変わっている。肩と、あどけない若い顔が同時に見えていて、振り向く途中で止まっているようだ。ウフィツィ美術館は、この込み入ったポーズと、淡い青のマントのひだの自然さを、レオナルドの手の特徴として挙げている。
なぜ重要か
「レオナルドは左の天使だけを描いた」——長くそう語られてきた絵である。16世紀の歴史家ヴァザーリが、その天使があまりに見事だったので、師のアンドレア・デル・ヴェロッキオが不快になった、と書いた。ウフィツィ美術館はこれをヴァザーリの記述として紹介しており、館自身の見解としては書いていない。
今日の研究は、もっと広く見ている。美術館によれば、レオナルドの手が入ったのは左の天使/金色の光が降りていく川辺の風景/そしてキリストの体である。つまり、絵の中心にいる人物まで弟子が描いたことになる。有名な逸話いつわの方が、むしろ控えめだった。
制作背景
20歳前後、まだアンドレア・デル・ヴェロッキオの工房にいた頃の共同制作である。作者の表示も、師と弟子の連名になっている。ウフィツィ美術館は、当時の工房では親方が絵を構想し、二次的な部分の制作を弟子や協力者に委ねるのが通例だった、と説明している。
さらに美術館は、この板にはもう1人、より年長の画家も加わっていた可能性が高いとしている。名前は挙げていない。根拠として挙がるのは、画面の上にある父なる神の両手と、聖霊せいれいはと。その部分だけ、描き方が古い段階にとどまっているという。左下の天使は弟子、中央のキリストも弟子、上の神の手は別の誰か——3人以上の手が、1枚の板の上で重なっていることになる。
絵はもともと市内のサン・サルヴィ修道院しゅうどういんにあった。1730年に別の修道院へ移り、1810年に市のギャラリーの所蔵となる。ウフィツィ美術館に入ったのは1919年である。
寸法
177 × 151 cm
材質・技法
板にテンペラと油彩ゆさい
所蔵
ウフィツィ美術館(フィレンツェ)A35室
目録
Inv. 1890 n. 8358
出典:ウフィツィ美術館 作品ページ2026-08-29 確認)