1668年
35〜36歳
机に向かった男が天球儀に手を伸ばしている。窓から光が入り、机に本と星図。
天文学者
L'Astronome / ルーヴル美術館
《天文学者》と《地理学者》は、1797年まで同じ人の手にあった。そこで離ればなれになり、いまは一枚がパリ、もう一枚がフランクフルトにある。館は、この二枚は厳密には対の絵ではない、と書く。対にするつもりで描かれたのではなく、同じ主題をごく近いところで変えた絵が、たまたま長いあいだ一緒にいただけなのである。
何が描かれているか
長い上衣を着た男が卓に身を乗り出し、手を伸ばして天球儀に触れている。顔は球へ向き、髪が肩に落ちている。
卓には織りの厚い布が寄せてあり、その上に開いた本、アストロラーベ、コンパスが置かれている。館によれば、天球儀は1600年のホンディウスのもの、本は1621年に出たメティウスの天文書で、星について書かれた章が開いている。
背後は木の戸棚。右の壁には暗い額が掛かる。左の窓から光が入り、部屋の奥は影に沈んでいる。
なぜ重要か
この男が誰なのかは分かっていない。同じ町に住んでいた顕微鏡の学者と結びつける説があるが、館はそれを、証拠は無い、としている。その学者は、この絵が描かれた頃にはまだほとんど知られていなかった。
右の壁の絵は、水から救われるモーセを描いたものである。館はそこに神の摂理への言及を見て、学者の営みと向かい合わせに置かれていると読む。それが虚しいものなのか、それとも賢いものなのか。館はどちらとも決めていない。
館は、学者を描くという主題そのものが、当時のオランダでよく取り上げられたものだったとも書いている。この絵の男は、その系譜の中にいる。
制作背景
壁のモーセの絵は、レリーという画家がオランダにいた頃に描いたものとされる。館は、それがフェルメール自身の持ち物だったかもしれない、としている。
学者が仕事をしている場面は、当時のオランダで好まれた主題だった。館はレンブラントやドウの名を挙げ、祈りや瞑想にふける聖ヒエロニムスや隠者の絵とも近いところにある、と書いている。
いま額に入っているのは17世紀オランダの枠で、1983年にアムステルダムの画商から、この絵のために贈られたものである。
寸法
51 × 45 cm
材質・技法
カンヴァスに油彩ゆさい
所蔵
ルーヴル美術館(パリ)
目録
RF 1983 28
出典:ルーヴル美術館 収蔵品データベース2026-08-29 確認)