受胎告知
Annunciazione / ウフィツィ美術館
何が描かれているか
天使が若い女性に「あなたは神の子を身ごもる」と告げている場面。受胎告知という、キリスト教で最も多く描かれてきた主題のひとつだ。
左でひざまずいているのが大天使ガブリエル。右手を上げて言葉を告げ、左手に白いユリを持っている。ユリは聖母マリアの純潔のしるしであり、フィレンツェの街の花でもある。マリアは本を読んでいた台の前に座り、顔だけを上げている。驚いて立ち上がったりはしない。
背景は、屋敷の前に広がる壁で囲まれた庭。外から誰も入れないこの「閉ざされた庭」も、マリアの純潔を指している。全体を薄暮の光が包み、遠くの木立が暗く沈む。その向こうに港と、青くかすんだ山が見える。
なぜ重要か
天使の翼が、本物の鳥から描かれている。当時の天使の翼は金箔で飾った記号のようなものだった。レオナルドは猛禽類——タカやワシのような、獲物を捕る鳥——を観察して、その形で描いた。天使の体が本当にそこにあるように見えるのは、草の上に影が落ちているからだ、とウフィツィ美術館は説明する。衣の襞にも、実物を写した跡が見えるという。
もうひとつ、マリアの右腕が不自然に長い。この絵は教会の横の祭壇に高く掛けられ、斜め下から見上げられる前提だった。正面から見ると変だが、想定された位置から見ると正しく見える——そういう計算をしていた可能性がある、とウフィツィ美術館は説明している。
制作背景
20歳の頃の作品で、現存するレオナルドの絵でいちばん早い時期のものにあたる。まだ当時フィレンツェで一番の工房を構えていたヴェロッキオのもとで学んでいた。マリアの前に置かれた書見台——本を載せる台——の飾りは、その師の意匠をそのまま借りている。元をたどると、サン・ロレンツォ教会にあるピエロ・デ・メディチの墓碑だ。
誰が注文したのかは分かっていない。もとの置き場所も分かっていない。1867年に、街のはずれにあった修道院からウフィツィ美術館へ移された。
⚠️ この絵は寸法がはっきりしない
ウフィツィ美術館は 90 × 222 cm としている。ところが残っている複製写真は、どれもその縦横の比にならない。もう一つ言われている 98 × 217 cm の方が、実物の形と合う。どちらが正しいか、まだ確かめきれていない。
出典:ウフィツィ美術館 作品ページ(2026-08-29 確認)