何が描かれているか
ローマ皇帝ヘリオガバルスの宴で、天井から大量の薔薇の花びらが客へ落ちる。皇帝たちは奥から眺める。
手前の客は花に埋まり始め、祝宴の美しさが息苦しい危険へ変わる。
薔薇は装飾の範囲を越え、手前の客の顔や体を覆うほど降り積もる。奥の皇帝側は水平に寝そべって見物し、手前の客は斜めに倒れているため、同じ宴が楽しむ側と苦しむ側でまったく異なる出来事になる。
作品の見どころ
横長の画面を花びらで埋め、人物の輪郭まで崩すことで「多すぎる美」を体感させる。
奥の皇帝側は水平に落ち着き、手前の客は斜めに倒れ、楽しむ側と苦しむ側が分かれる。
薔薇の色を美しいと感じたあと、花の下にある口や手を探すと、快楽が暴力へ反転する。遠近法で奥へ逃げる道も花びらに塞がれ、鑑賞者まで香りと息苦しさの間に置かれる。
制作背景
1888年制作。古代の皇帝伝にある、宴の客へ花を降らせた逸話をもとにした。
史料の文章をそのまま図解せず、薔薇の色と量を劇的に拡大した想像上の歴史画である。
古代末期に編まれた皇帝伝『ヒストリア・アウグスタ』にある、天井から花を落として客を窒息させたという逸話が出発点である。これは同時代の実況記録ではなく、作品も文章の忠実な図解ではない。画家は花を薔薇へ置き換え、その量と色を劇的に広げた。