1482年頃
東方三博士の礼拝。中央の聖母子を群衆が半円形に取り囲み、背景に崩れた建物と馬に乗った騎士。未完成。
東方三博士とうほうさんはかせの礼拝
Adorazione dei Magi / ウフィツィ美術館
何が描かれているか
生まれたばかりのキリストのもとへ、東方の三博士が贈り物を持って訪れた場面。手前でひざまずき、黄金・乳香にゅうこう没薬もつやくささげている。
人の多い構図が半円状に組まれ、その焦点に聖母子せいぼしが置かれる。ウフィツィ美術館は主題を公現祭こうげんさい——聖アウグスティヌスによれば、すべての民がキリストの呼びかけに応える日——として説明する。
背景が異様だ。崩れた建物があり、馬に乗った騎士たちがぶつかり合っている。左手では建物、おそらく神殿の工事が進む。美術館は、平和を暗示する神殿と、反対側の戦う馬の混乱とが対比されていると書いている。
なぜ重要か
未完成のまま止まっている。美術館はこの絵を「下描きの初期段階で執行が宙づりになったままの絵」と記す。人物によって進み具合が違い、ほとんど輪郭だけの者もいれば、着想をつかまえるように描き込まれた者もいる。
完成した絵は、迷った跡を塗り込めて隠してしまう。この絵は途中で手が止まったおかげで、どこから描き始め、何を先に決めていたのかが残った。空には鉛白えんぱくの下塗りとラピスラズリが置かれている。考えている最中の画面が、そのまま見える。
制作背景
1481年7月の文書によれば、フィレンツェの城壁の外にあるサン・ドナート・ア・スコペート聖堂の、主祭壇の板絵として注文された。頼んだのはアウグスティノ会の修道士しゅうどうしたち。仕上げの期限は30か月と決められていた。
同じ年の9月には、まだ描いていた記録がある。ところがその後、彼はフィレンツェを離れ、ミラノの宮廷へ移ってしまう。制作はそこで止まった。
修道士たちは画家が戻るのを待った。戻らなかった。結局、フィリッピーノ・リッピという画家に同じ主題の祭壇画さいだんがを頼み直した。仕上がったのは1496年である。最初の注文から15年が経っていた。リッピの方は彩色まで仕上がっていて、いまも同じウフィツィのA28室にある。
寸法
244 × 240 cm
材質・技法
板に木炭素描そびょう・水彩インク・油彩ゆさい(未完成)
所蔵
ウフィツィ美術館(フィレンツェ)A35室
目録
Inv. 1890 n. 1594
出典:ウフィツィ美術館 作品ページ / ウフィツィ美術館 フィリッピーノ・リッピ《東方三博士の礼拝》2026-08-29 確認)